年末に予定が立て込んでいてかなりバタバタしていました。日本分子生物学会でのワークショップ開催とアメリカ細胞生物学会(ASCB)参加を含むサンディエゴ訪問を無事終えて、今は顕微鏡の共同利用のため国立遺伝学研究所に滞在しています。
ワークショップでは「パターン形成」をテーマに繊毛研究の若手研究者を集めて発表していただきました。繊毛の中では微小管をベースとするタンパク質の骨格構造が非常に幾何学的なパターンを形成しています。この構造パターンの崩壊は繊毛の欠損や機能不全につながりヒトの様々な病気にも関わります。解析には電子顕微鏡を用いたアプローチが主に用いられるような、分子スケールのパターンです。また、繊毛は、我々の体の形=パターンの形成にも深く関わっています。腎臓の尿細管では、繊毛が機械センサーとして細胞外の水流を感知することで組織の形を制御します。また、ヒトを含む一部の脊椎動物では、発生過程で体の左右非対称なパターン(我々の体は外から見るとほとんど左右対称ですが、心臓や胃などの臓器の配置は左右非対称ですよね)をうまく形成するために、繊毛の機能が必要です。さらに、微生物の繊毛は個体の運動パターンを生み出したり、生物対流など、個体が集まった集団の時空間パターンを生み出します。このような様々なスケールでの「パターン形成」を結びつける要素としての繊毛に着目したワークショップでした。演者の皆さんにはとてもおもしろい講演をしていただき、また、フロアからも素晴らしい質問が多くあり、とても有意義でした。聴きに来ていただいた方々も含め関係者の皆さん、ありがとうございました。
その直後にASCBの参加とUCSDでのセミナー発表のためサンディエゴを訪問しました。オンラインで迅速に大量の情報が飛び交う現代では、学会参加の意義は学術的な情報収集よりも研究者間のネットワーキングの方に重点があると個人的には思っています(もちろん前者がないがしろにされるべき状況ではありませんが)。早いもので帰国してから2年以上が経ち、アメリカ訪問もちょうど2年ぶりでした。アメリカでの研究生活で出会った多くの人と再会し、また新しい出会いもありました。特にミシガン大学時代のボスとの2年ぶりの再会は感慨深く、近況報告や研究の話など大いに盛り上がりました。サンディエゴ訪問に際してUCSDの同分野の方からセミナーに招待していただいたので、そちらでも発表してきました。生物物理に強い方もいて、とても有意義でした。ASCBでの生物物理系の人たちとの交流や少し前に参加した「細胞を創る」研究会でも実感しましたが、物理や数理に詳しい方々ともっと積極的に交流したいです。帰国してから少しインプットが足りてないように思います。研究の本筋ではないかもしれませんが、よりよい研究のためにこのあたりを意識していきたいです。
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