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  • 執筆者の写真高尾大輔

細胞画像のわずかな特徴の違いの見分け方をAIに教えてもらおう

更新日:2020年4月24日



最近取り組んでいた研究が論文になりました。一言で説明すると、大量の細胞画像から一つ一つの細胞を自動的に切り出し、ディープラーニングにより細胞周期などを判定するAIツールと、その情報をさらに解析することで細胞周期によって変動する核の形状やゴルジ体の配置パターンなどを抽出する技術を確立しました。これは、人間の目ではとらえにくいわずかな細胞内の変動をAIが発見し、研究者に教えてくれる技術です。


細胞周期によって細胞内の組成や構造は大きく変わることが予想されますが、実際に何がどのように変動するのかを顕微鏡画像から網羅的かつ定量的に解析するためのアプローチは限られていました。そこで具体的に細胞内の何に着目すればいいのかを知るために、ディープラーニングを使って、細胞周期によって変動するパラメータを画像の中から見つける技術を開発しました。これまで研究者が「なんとなく」「経験的に」とらえていた現象や、そもそも見過ごされていた情報を、AIの手助けにより発掘・定量化しようという試みです。その結果、本研究で開発したAIは、DNAやゴルジ体の染色画像の中から、細胞周期によってわずかに変動する特徴を発見しました。この情報を使って今度は人間の手で画像を詳しく解析したところ、核やゴルジ体の面積などの特定のパラメータを測定することで画像から細胞周期を分類できることが分かりました。すなわち「画像のどこに着目すれば目的の情報が得られるのかAIが教えてくれる」という研究サポートツールの開発に成功しました。


ところでこの研究、実は、元々は画像から繊毛があるかないかを分類するツールを作るのが目的でした。繊毛研究者なので笑。例えば大量の画像を個別に繊毛があるかないか機械的に判定してくれるツールがあれば、大規模スクリーニングなどに有用です。それで実際にやってみると思ったより簡単にできてしまったので、これを使ってもっとおもしろいことができないかと考えているうちにふと思いついたのが今回の論文の内容です。人間が見てもよく分からないわずかな特徴の違いにAIなら気づくのでは?という思いつきで始めてみた研究が思った以上にうまくいって、AIの提示した情報を基に定量したデータがきれいに細胞周期グループにクラスタリングされたときは感動しました。こういう瞬間が研究の醍醐味だと思います。


余談ですが、今回、いつも使っているImageJを封印し、画像解析含めすべてPythonコードを書きました(筆頭著者である長尾さんの努力によるところが大きいです!)。コード公開を意識してプラットフォームを統一したかったのと、こうでもしないとなかなか慣れた環境を抜け出してPythonに手を出せないという切実な事情も。。笑。ディープラーニングの部分やその下準備の画像処理も含めて主要なコードはGitHubで公開しています(論文にリンクあり)。


さらに余談ですが、今回初めてラストオーサーとして論文を発表しました。研究の立案段階から小さいながらも自分のチームを率いて短期間で論文発表につなげられた達成感は大きいです。自由にやらせてくれた上長の岡田康志教授と共著者含めサポートしてくださった皆さんに改めてお礼申し上げます。共コレスポ含めてこれで4本目のコレスポ論文。引き続きおもしろい研究ができるよう頑張ります。

論文情報

Yukiko Nagao, Mika Sakamoto, Takumi Chinen, Yasushi Okada, and Daisuke Takao

Robust classification of cell cycle phase and biological feature extraction by image-based deep learning

Molecular Biology of the Cell

DOI: https://doi.org/10.1091/mbc.e20-03-0187

プレスリリース

関係各所から出ていますがメインの東京大学IRCNのプレスリリースはこちら。

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