国際科学技術財団からの助成に関連して期間限定で開設したブログからの転載です(2017年8月24日の記事)。
8月21日に国立遺伝学研究所で近隣の高校生を対象としてやさしい科学セミナーを開催しました。テーマはイメージング技術。光学顕微鏡の歴史と原理、中でも現代の生命科学研究で中心的な役割を担う蛍光顕微鏡法(共焦点顕微鏡法や超解像顕微鏡法を含む)の仕組みや応用例などを紹介しました。また、参加者にはその後に実際に共焦点顕微鏡を使った細胞の観察と、画像解析ソフトImageJを使ったデジタル画像の処理を体験していただきました。
光学顕微鏡の結像原理や分解能、光学系の設計などの基礎を全て講義しようとすると数日がかりになってしまうところを1時間に詰め込んだので、かなり駆け足な紹介でした。高校生を対象としている割には少し難しい内容だったかもしれません。実はそこはあえてレベルを少し高めに設定しました。大学や大学院の講義においても、生物系の学科・研究科では必ずしも光学の基礎をじっくり学ぶ機会があるとは限りません。今回の講義で全てを理解できなくても、興味を持ち自分でじっくり勉強するきっかけになればとの思いです。
百聞は一見に如かずと言いますが、細胞の中で起こっていることを知るためには実際に見てみることが大事だと思います。細胞の中を可視化する技術により生命現象の理解が深まり、また、病気のメカニズムや治療などに役立つ知見も得られます。何より、普通には見えないものが見えるようになることがおもしろく、このような楽しみは研究の醍醐味と言えるかもしれません。子供の頃に小さな顕微鏡を買ってもらって身近なものをいろいろと観察したのをよく覚えています。大学院でたまたま光学顕微鏡の専門家である恩師の下で研究することになり、ますます細胞の中を可視化するおもしろさにはまりました。ここ数年は自分で顕微鏡を改造したり作ったりといった機会はほとんどありませんが、それでも一貫して顕微鏡観察によるアプローチを重視して研究を進めています。自分がおもしろいと思うことはもちろんですが、より多くの人から興味を持ってもらえるように、これからも顕微鏡のおもしろさを伝えていきたいと思います。最後に、今回のセミナーに参加していただいた高校生の皆さん、企画・運営を支えてくださった皆さんにこの場を借りてお礼申し上げます。
参考リンク
当日の講義の内容ほぼ全てと実習内容の一部が動画で公開されています。
Comments