移籍して初めての学生実習を終えました。かねてから学部や大学院のなるべく早い段階で画像解析の実習を導入したいという希望があったので、本実習の担当が決まった時に、これまでの内容を刷新することにしました。細胞外からのリガンド(TNFa)の刺激により、転写因子であるNFkBが細胞質から核へと移行するという、よく知られたシグナル経路があります。NFkBは抗体を用いて容易に染色でき、さらに細胞質から核という局在変化は顕微鏡観察で判別しやすいため、実習のテーマとして採用しました。実習では培地にリガンドを加え、細胞を固定・免疫染色した後に、蛍光顕微鏡観察を行いました。そしてあらかじめ私が用意しておいた顕微鏡画像(本当は自分たちのサンプルを使ってほしいところですが時間の都合でやむを得ず)を画像解析ソフトImageJで処理・定量しました。コンピュータを使った画像解析に丸一日を費やすスタイルの学生実習はなかなか斬新ではないでしょうか?笑
この実習の構想はかなり前からありました。以前も書きましたが、今の時代の生命科学研究では顕微鏡で観察して終わり、というわけにはいきません。顕微鏡データの画像処理や定量解析は必須であり、これらの作業はもはやウェットな実験の範疇と言えます(そもそもウェット・ドライの区別は無意味なので好きではないというのも以前書いたと思いますが。。)。こうして当然のように画像データの取り扱いが求められる一方で、そのための知識や技術をちゃんと学ぶ機会はかなり限られているのが実情だと思います。実際、そのような教育機会の必要性を感じる場面に何度も遭遇しました。これまで勉強会の開催などを通じて自分の知識や技術を共有してきましたが、今回公式に学生実習として構想を実現できたことは私にとってとても意義深いものでした。
とはいえ時間の都合であまり深い内容までは盛り込めなかったのは心残りです。あまり内容を盛り込むと実習というより講義になってしまうのも難しいところですね。画像ファイルフォーマットの特徴やビット数などの重要な基礎知識からImageJのマクロ作成といった実践的な知識までを本当はもっと詳しく解説したいのですが。講義をした上で実習、というのが理想的でしょうか。このあたりは今後の課題です。物足りなければ自分でもっと工夫できるようなヒントは盛り込んだつもりなので、今回の実習が今後自分でいろいろ勉強するきっかけになれば本望です。各班でデータを分散して共同作業で解析してもよいということにしたのですが、クラウドでデータ共有して効率的に作業していたり、皆さんそれぞれ工夫していてなかなか感心しました。
最後に、今回実習テキスト作成というところから全て初めてだったので細かいところでいろいろばたばたしてしまいましたが、実習担当技術員とTAの皆さんにはとても助けられました。ご協力に感謝いたします。
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